センターの紹介
ナビゲーション脊椎手術システムと、それをベースとするロボット脊椎手術システムを装備
ARTIS pheno(アーティス・フィノ)を中心とする最新のナビゲーション脊椎手術システム並びにそれをベースとするロボット脊椎手術システム Cirq(サーク)をはじめ、脊髄機能モニタリングシステムや牽引矯正ボックス(CORRECTION BOX)、前方内視鏡・手術用顕微鏡など、安全で精度の高い脊椎手術を実現するための豊富な医療機器を装備しています。
脊椎センター・脊柱側彎症センター専用ハイブリッド手術室
- 多軸型CT様画像撮影装置 ARTIS pheno(アーティス・フィノ)
- 連動手術台 TRUMPF(トルンプ)
- 脊椎ナビゲーションシステム Curve(カーブ)
- 脊椎ロボットアームシステム Cirq(サーク)
- 牽引矯正ボックス CORRECTION BOX ※江原センター長が独自開発
多軸型CT様画像撮影装置 ARTIS pheno(アーティス・フィノ)
当センターでは2012年10月1日より、世界で初めて、術中画像支援システムArtis zeego(アーティス・ジーゴ)とTrumpf社の手術台、Curveナビゲーションの組み合わせによる、コンピューター支援手術システム(ナビゲーション脊椎手術システム)を開始しました。
Artis zeegoはロボットの多軸駆動着想を得た術中画像支援システムで、ロボットアームで容易に患者様の体に画像撮影装置を近づけられます。また、撮影時間も最短5秒に短縮されます。コンピューター支援により、手術器具の位置を正確にナビゲーションしながら手術を行うため、安全性と確実性がさらに高まりました。
2012年10月から2018年12月までにArtis zeegoを用いた手術で脊椎に1万8千本以上のスクリューを挿入、入れ替えを必要としたのはその内38本(0.2%強)でした。
2019年2月、Artis zeegoをベースに様々な改良が加えられた新世代のシステム、ARTIS phenoへ入れ換え新導入し、さらにハイエンドスペックの脊椎ナビゲーションシステムを構築し、ロボット脊椎手術のプラットフォームとして欠くことのできないものとなりました。
ARTIS pheno(2019年2月~新導入)
Artis zeego(2012年10月~2018年12月末)
8つの軸を持つCアームが回転しながら手術台の患者さんを撮影。わずか5秒で脊柱の鮮明な3次元(3D)画像の撮影と作成が可能です。
ARTIS pheno(アーティス・フィノ)の特長
①新設計のCアーム
ロボット技術を取り入れた特長的な多軸構造を踏襲しつつ、Cアームのオープンスペースを大幅に拡大しています。その結果、Cアームと患者さん・手術台との干渉に対する余裕が生まれ、手術中のCアームのセッティングもスムーズかつ迅速に行なうことができます。
また、CT様画像撮影そのものや、全脊柱撮影等もさらにスピーディに施行できます。この新設計Cアームにより、さらなる正確な手術や手術時間の短縮につながっています。
②基本画質性能の向上と進化したCT様画像作成技術
ARTIS pheno は従来とはコンセプトの異なる次世代のX線検出器(プラットパネルディテクタ)、新型X線管を採用しており、これに合わせて画像処理系も一新され、得られる透視、撮影画像はさらに高精細かつ高画質なものとなりました。
椎体やインプラント等の構造、位置関係をさらに鮮明に観察でき、治療精度の向上に寄与します。
ナビゲーション手術には必須の技術ですが、上述した収集画像の高画質化により、CT様画像もさらに高精細かつ高品質となります。ナビゲーション手術の精度がさらに向上するばかりでなく、CT様画像から得られる高精度な3次元的位置情報は、脊椎ロボット手術において有用に活用されております。
なお、このCT様画像関連の付加機能も新たに製品化されており、いずれも脊椎手術に有用です。
メタルアーチファクト除去技術:インプラント等の金属に起因するアーチファクト(偽像)はCT様画像劣化の原因となり、挿入状況の確認が困難なケースがあります。このアーチファクトを効果的に除去することで、迅速かつ確実なインプラントの確認、評価が可能となります。
インプラント挿入誘導技術:インプラントの挿入経路を計画し、透視下での誘導を支援する技術ですが、複数の経路計画が可能となり、側彎症を含む脊椎手術においてますます有用性が高まっています。
③清潔に配慮した装置設計
液体の溜まりを防ぐために外装の段差やつなぎ目を最低限とし、外装自体にも抗菌コートを施すことで装置自体を清潔に保つ工夫がなされています。
また、天井方向に伸びていた高圧ケーブルも無くし、菌類や埃等の堆積し難い構造となっています。装置自本体の清潔維持に注目し、設計に生かした初のCアームシステムであり、感染症予防の観点からも有用です。
脊椎ナビゲーションシステム Curve(カーブ)
ARTIS pheno で手術中に撮影したCT様画像(3D画像)をベースに、赤外線によるナビゲーション脊椎手術を行います。これによりスクリュー挿入時の位置方向と長さをリアルタイムにモニターしながら挿入することが可能です。
また、骨切りについてもリアルタイムでナビゲーションの支援を受けながら行うことができます。
連動手術台 TRUMPF(トルンプ)
ARTIS pheno の画像撮影時に位置が連動して設定可能な手術台です。
脊椎ロボットアームシステムCirq(サーク)
入念な準備の上、2021年4月1日より脊椎ロボットアームシステムCirq(サーク)を用いたロボット脊椎手術を開始いたしました。上述の脊椎ハイブリッド手術室でのARTIS phenoのデータをCurve(カーブ)ナビゲーションシステムへ送付して、そのナビゲーションデータをベースにロボットガイダンスによる椎骨スクリュー挿入のガイドホールを作成するシステムです。
さらにこのロボット脊椎手術(ロボットガイダンス椎骨スクリュー挿入ガイドホール作成システム)を加えることにより、さらに高精度かつ安全にスクリュー挿入を行うことができます。
これまではナビゲーション下にガイドホール作成を外科医が行い、そのホールに沿ってスクリューを挿入していました。
脊椎ロボットアームシステムCirqは、ナビゲーションシステムの位置精度を継承し、ナビゲーションモニター上で医師が指示したスクリュー挿入プラン(ポインターの位置・方向)そのものにガイドチューブを挿入して、ガイドホールを作成します。手動操作とロボティック制御のモジュールを組み合わせ、医師が指示した位置・方向その通りにガイドホールを作成することが可能です。作成したホールに沿って医師はスクリューを挿入します。
牽引矯正ボックス(CORRECTION BOX)江原センター長が開発
当センターでは江原が独自に開発した脊柱側彎症手術に対する牽引矯正ボックス(CORRECTION BOX)を用いて手術を行っています。
これは手術室において、手術直前に上下肢を牽引して脊柱変形をできるだけ矯正した上で手術を開始するシステムです。体幹ボディバランスを整えて、側彎のカーブを事前にできるだけ減少させてから手術を開始します。このために手術切開を始める前にすでに相当の矯正を獲得してからの手術になります。
牽引矯正ボックス(CORRECTION BOX)を用いた手術
当センターでは、脊柱側彎症の手術開始前に矯正ボックスを用いて体幹バランスを整え、さらに上下肢を牽引してできるだけ側彎症のカーブ矯正を行ないます。その後、手術を開始します。
後方矯正固定術では椎弓根スクリューを挿入し、続いてオープンアウトリガーを用いて矯正を加えロッドを挿入したり、ショートロッドで少し矯正してからロングロッドを挿入し、その上でロッドローテーション等を施行しさらに矯正します。椎弓根スクリューを挿入できないところでは圧縮フックを使用することで骨をしっかり捉えることが可能です。
成人側彎症の場合、矯正した脊椎が傾斜することが稀にあるので、骨盤から直角にセットしたショートロッドを連結して完全なバランスに整えることもあります。
さらに、ライトアングルフックロッドと固定することで固定強度を高めることができます。手術には種々の矯正オプションを用いますが、動画はその一例を模型で示したものです。
動画によるご紹介
脊椎ロボットアームシステムCirq(サーク)
ARTIS pheno(アーティスフィノ)
ハイブリッド手術室 主要設備一覧
- ハイエンドスペックコンピューター支援手術システム(ナビゲーション脊椎手術システム)
- CT様画像作成装置 ARTIS pheno、連動手術台 Trumpf、脊椎ナビゲーション装置Curve
- Cirq ロボットアームシステム
- 3D-モバイルX線透視装置(3次元画像作成用X線透視装置)
- 脊椎側彎症牽引矯正手術台(CORRECTION BOX)
- ジャクソン手術テーブル
- 脊髄誘発電位測定装置(感覚、運動)
- 内視鏡手術システム
- 手術用顕微鏡(ZEISS)
- 内視鏡下脊椎後方手術システム
- 椎間孔鏡脊椎手術システム
- 電動式高速回転ドリル
- 超音波凝固切開装置
脊椎の矯正や固定に使用する、スクリューやロッドの材質=チタン合金
【チタン合金を採用している理由】
- 体内で腐食しない
- スクリューは1本あたり5~6gと軽量
- アレルギー反応を生じない
- MRI撮影が可能
【耐用年数】
材料そのものが耐食性に優れており劣化しないので、長期間患者様の体内に入っていても影響はありません。