センター長紹介

INTERVIEW
信念で切り拓く
脊椎外科治療の道
未来へと続く挑戦
院長/センター長 江原 宗平

厳しい時代の中で得た
医師としての経験

私が医師を志したのは、一つのテレビドラマがきっかけでした。「ベン・ケーシー」というアメリカの医療ドラマです。高校生の頃、彼のような外科医になりたいと憧れを抱き、大阪大学の医学部に進学。卒業後、大阪大学医学部付属病院で研修医生活を送ったあと、星ヶ丘厚生年金病院の脊髄損傷病棟での勤務を始めました。

さらに翌年には、国立呉病院の整形外科に移り、そこで元海軍病院の伝統ある外科チームの一員として、がん治療にも関わりました。年間900件の全身麻酔手術が行われる外科の現場で、助手や麻酔担当として呼ばれ、もちろん自身の整形外科の手術もおこなっていました。厳しい環境ではありましたが、その中で得た多くの経験が私を育ててくれたのです。

INTERVIEW #01

学びの先に見えた脊椎外科の道

その後、大阪に戻り、市中の病院で1年間勤務する機会を得ました。しかし、大学の医局から再び声がかかり、今度は大阪府立病院での勤務が決まりました。そこで私は、多くの人工関節手術や大外傷の手術を行う日々を過ごしました。この病院は大阪中心エリアの三次救急の中核病院であったため、症例も非常に鮮烈なものが多かったことを覚えています。

3年ほど府立病院で勤めた後、「脊椎の手術をしたい」という強い気持ちから大学に戻り、脊椎外科を専門的に学ぶことになりました。大学では研究と臨床を繰り返す日々を過ごし、生活もこれまでとは180度変わりました。私が仕えた教授は非常に賢明な頭脳の持ち主でありながら、同時に強烈な手術を行う方でした。昔の武士のような雰囲気と、非常に頭の冴えた印象を併せ持った不思議な方でした。

そのような教授の下で、がんの脊椎転移に対する人工椎体置換術や、骨盤腫瘍の切除と再建、小児の重度脊柱変形に対する前後方の複合手術などを行いました。朝8時に手術が始まれば、終わるのは深夜2時、3時ということも珍しくありません。翌日には通常の業務もあるため、身体が休まる時間はほとんどありませんでした。また、そうした合間を縫って実験を行い、論文を作成していました。

INTERVIEW #02

アメリカでの挑戦、そして帰国後の試練

大学で約7年半過ごした後、コロンビア大学の整形外科基礎研究室にポストドクトラルフェロー(博士取得後研究員)として招かれました。アメリカでは実験を中心に行い、毎晩夜遅くまでラボにこもって実験をしていました。しかし、2年後に教授から帰国を命じられ、帰国後は再び大学で脊椎外科のトップとして勤務を始めました。

その後、信州大学へ3年間の予定での派遣も決まり、脊椎手術と実験を指導しました。信州大学では助教授になりさらなる挑戦を続けましたが、教授選で思わしくない結果となりました。そんな時、将来を変える電話がかかってきました。

それは、徳洲会グループ創設者で名誉理事長である故・徳田虎雄先生からの直接の連絡でした。「山猿、娑婆に降りてこい。我々のグループで脊椎センターを立ち上げ、存分に腕を振るえ。」とお声がけいただきました。さらに、大橋壯樹先生(現・医療法人徳洲会副理事長)からも同様の連絡をいただき、私は徳洲会に身を置くことにいたしました。

安全かつ正確な手術を追求して

こうして2004年、当院の前身である茅ヶ崎徳洲会総合病院(神奈川県茅ケ崎市)に脊椎センター・脊柱側彎症センターを開設しました。そこからの20年間は、まさに手術と挑戦の連続でした。

2012年には現在の湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県藤沢市)へ病院が新築移転する際に、術中画像支援システムのArtis zeego(アーティス・ジーゴ)、連動手術台、Curve(カーブ)ナビゲーションを組み合わせた脊椎ハイブリッド手術室でのコンピューター支援脊椎手術を世界に先駆けて開始しました。2016年には、矯正ボックスを用いた牽引手術システム(CORRECTION BOX)を考案・開発し、2019年にはArtis zeegoを基にさまざまな改良が施された新世代システムARTIS pheno(アーティス・フィノ)を導入。また、2021年にはCirq(サーク)ロボットアームシステムを用いたロボット脊椎手術を日本で初めて実施し、高精度かつ安全性の高い手術環境を整えてきました。

INTERVIEW #03

「これからの手術は定量化が重要だ。目で見る時代は終わる。」これは私が30代のころに当時の教授から教えていただいた言葉です。その後、1996年に信州大学で講師をしていた際、外資系メーカーから届いたCTベースナビゲーションシステムのパンフレットを見て、はっとこの言葉を思い出しました。それをきっかけに、日本で初めて脊椎手術におけるナビゲーションの導入に取り組み、現在に至るまでそのノウハウは着実に蓄積されています。また、医師の手技と同時に、より高い正確性と安全性を追求した手術システムの組み合わせになっています。その成果は、患者さんに対しより正確かつ安全な脊椎手術を提供でき、未来の医療を形作る一助となっています。

傷を最小限に、新しい治療法を目指して

進化を遂げているのは医療設備のみではありません。センター開設前の1994年には、内視鏡を使用し脇の下の小さな切開だけで手術を行う前方矯正固定術を考案・開発しました。これにより、従来は背中から脇の下を大きく切開して行われていた前方矯正固定術を、わずか7センチの傷を2つだけで実施できるようになりました。特に思春期特発性側彎症は若い女性に多く見られるため、背中に傷痕が残らないこの手術は喜んでいただけることが多いです。

※ただし、この手術は主に10代~20代で軽症の側彎症のカーブが適用です。重度カーブや長いカーブ、30代以上の方は適用ではございません。

患者さんのために挑み続ける脊椎手術

2004年8月のセンター開設から現在にかけて、実に5,700例以上の脊椎手術を行ってまいりました。その中でも特に側彎症手術は1,600例以上と関東、国内においても数多くの実績を積み上げることができています。

「着てみたかった服を着ることができた」「諦めかけていた夢を掴むことができた」など、自身が手術を担当した患者さんから前向きな報告をいただけることが、何よりのやりがいだと感じています。これまで日々手術に邁進してきた中で、常に「もっとうまく手術ができないか」「もっと新しいことを思いつかないか」という思いを抱き続けています。すべては全国から訪れる患者さんのために。今後もより多くの側彎症手術を実施し、新しい手術のアイデアを創出していきたいと考えています。

INTERVIEW #04
PROFILE
湘南藤沢徳洲会病院院長
脊椎センター・脊柱側彎症センター長
原 宗平えばら そうへい
専門分野 脊椎全般、頚椎、胸椎、腰椎、脊柱側彎、脊柱変形

専門分野

  • 脊椎全般
  • 頚椎
  • 胸椎
  • 腰椎
  • 脊柱側彎
  • 脊柱変形

経歴

  • 大阪大学医学部卒
  • 1985年 大阪大学 整形外科 助手 脊椎外科・脊柱側彎症外科 専攻
  • 1992年 米国コロンビア大学 医学部整形外基礎研究室 博士取得後
    研究員
  • 1995年 大阪大学 医学部整形外科 講師
  • 1996年 信州大学 医学部整形外科 講師
  • 2001年 信州大学 医学部整形外科 助教授
  • 2004年 脊椎センター・脊柱側彎症センター長 / 副院長
  • 2022年 脊椎センター・脊柱側彎症センター長 / 特任院長
  • 2023年 脊椎センター・脊柱側彎症センター長 / 院長

専門医・認定医等

  • 日本整形外科学会整形外科専門医
  • 日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医1種(前方手技)
  • 日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
  • 日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医
  • 医学博士
  • 身体障害者福祉法第15条指定医(肢体不自由)
  • 神奈川県 難病指定医
  • 日本低侵襲脊椎外科学会名誉会員
  • 日本側彎症学会元幹事
  • PASMISS (The Pacific Asian Society of Minimum Invasive Spine Surgery), Board Member
  • 2004年 第7回日本内視鏡低侵襲脊椎外科学会会長
  • 2018年 ハイブリッド手術室脊椎手術研究会会長

受賞歴

  • 1986年 米国 Cervical Spine Research Society Award(米国頸椎外科学会賞)
  • 1999年 日本骨代謝学会優秀ポスター賞
  • 2002年 日本側彎症学会ベストペーパー賞
  • 2016年-2017 Best Doctors in Japan
  • 2018年-2019 Best Doctors in Japan
  • 2020年-2021 Best Doctors in Japan
  • 2024年-2025 Best Doctors in Japan

Best Doctorsとは

ベストドクターズ社が、同じ専門分野の医師に対し、「自身や家族の治療を自分以外の誰に委ねるか」という観点からアンケートを行ない、一定以上の評価を得た医師を選定するというものです。

Best Doctors in Japan Best Doctors in Japan Best Doctors in Japan Best Doctors in Japan

論文・業績

依頼講演、一般発表など

第27回日本低侵襲脊椎外科学会(JASMISS 2024)

2024年11月21日・22日
「内視鏡下側彎症前方矯正固定術・ナビゲーション脊椎手術・脊椎ハイブリッド手術室・ロボット脊椎手術・側彎症矯正BOX」

第53回日本脊椎脊髄病学会学術集会

2024年4月18日~4月20日
「脊柱側弯症手術-前方・後方-ハイブリッド脊椎手術室/32564本挿入とロボット椎骨スクリュー挿入/3794本挿入」

第57回日本側彎症学会学術集会

2023年11月10日~11月11日
「脊柱側彎症手術-前方・後方-ハイブリッド脊椎手術室/30977本挿入とロボット椎骨スクリュー挿入/3510本挿入」

第52回日本脊椎脊髄病学会学術集会

2023年4月13日~4月15日
「ハイブリッド脊椎手術室/28560本挿入とロボット椎骨スクリュー挿入/2690本挿入脊柱側彎症手術―前方後方―」