Q&A

治療・手術に関する質問
Q. 側彎症になったら必ずコルセットを着けますか?
A.

すべての方がコルセットを用いた装具治療をおこなうわけではありません。背骨の曲がり具合が少なく成長期が終わっていないお子さんなどには、進行予防の体操を指導して経過観察を行うこともあります。

Q. コルセットにはどんな種類がありますか?
A.

装具治療として手術前に着けるコルセットと、手術後に脊柱を固定する目的で着けるフレームコルセットがあります。
前者は側彎のカーブ(Cobb角)が20~45度程度ある成長期のお子さんが、側彎症の進行を遅らせるために着けるコルセットです。
後者は手術後固定のために3ヶ月着けていただくコルセットで、入院中にオーダーメイドで作成します。

Q. 手術が必要かどうかはどのように判断しますか?
A.

当院の場合、腰椎ではカーブ(Cobb角)が35度くらいから、胸椎ではカーブ(Cobb角)が40度を超えると手術適応になりますので、その場合は患者さんに説明させていただいております。

Q. 手術適応の年齢は決まっていますか?
A.

子どもの側彎症に関しては、成長時期や症状の進行具合、身長・体重、骨の成熟具合を示す指標であるリッサーサインなどさまざまな情報から手術のタイミングや必要な治療法を判断します。
ご高齢の方の場合、当院で側彎症手術を受けた患者さんの最高齢は88歳です。

Q. 男女間で治療や手術に違いはありますか?
A.

基本的に治療や手術の内容に大きな違いはありません。しかし、男性の場合、骨密度が高く骨が丈夫にもかかわらず、手術で体内に挿入したインプラントに骨が拒否反応(骨溶解)を起こし、抜け落ちてしまうことがあります。
その場合、まずはインプラントを除去し、骨を強化する薬(プラリア、テリボン等)を投与します。すると、骨の穴が空いた箇所に粘性の強い結合組織が集まるため、再手術をおこなって同じ箇所にインプラントを挿入することができます。
手術前の検査では骨溶解が起こるリスクまでは判断できないため、当院では手術前のインフォームド・コンセントの際に、手術を受ける男性の患者さんに必ず再手術の可能性がある旨を説明しています。

Q. 股関節の疾患も併発している場合、どちらから先に手術するべきですか?
A.

当院では側彎症手術を先に受けていただくことを推奨しています。特に側彎症によって左右の脚の長さが異なる方にとって、先に背骨をまっすぐに矯正しておくことで、その後の股関節手術で脚の長さを是正できるといったメリットがあります。

Q. 側彎症の手術にはどんな種類がありますか?
A.

当院の手術は「後方矯正固定術」と、センター長の江原が考案した小切開の「前方矯正固定術」があります。いずれもインプラントを用いて、変形した脊柱をできるだけ正常な形態に戻す手術です。
「後方矯正固定術」は背中の正中を真っ直ぐに切開してインプラントを挿入するため、矯正力・固定力ともに強力です。重度のカーブやダブルカーブ、長いカーブなどに適応しています。
「前方矯正固定術」は、従来背中から脇の下を大きく切開しておこなわれていましたが、1994年に江原が内視鏡を利用しながら脇の下の小切開で行う手術方法を考案・開発しました。背中に手術の痕が残らないメリットがありますが、比較的短くカーブの少ない10代~20代の方が適応となります。

Q. 手術時間はどのくらいでしょうか?
A.

当院ではナビゲーションシステムの導入し手術の安全性を高めています。手術時間は若い方の「後方矯正固定術」で3~5時間、「前方矯正固定術」が4~6時間程度です(例外もあります)。中年から高齢の方の「後方矯正固定術」は4~7時間程度が目安です(例外もあります)。

Q. 手術におけるリスクはありますか?
A.

「後方矯正固定術」の場合、出血、肺塞栓、術後感染、麻痺などのリスクが挙げられます。「前方矯正固定術」の場合、出血、肺塞栓、術後感染、麻痺、乳び胸、胸水(自然吸収されます)のリスクが挙げられます。
※当センター開設後から現在まで麻痺事例はありません。

Q. 手術後にせん妄になることはありますか?
A.

せん妄とは、入院時や手術後など体に負担がかかったときに起こる脳の機能の乱れです。中年から高齢の方に多く見られ、ほとんどの場合は手術後2〜3日ほどで治ります。若い方はほとんど起こりません。
症状には個人差があり、患者さんによっては点滴の管を抜いてしまうケースもあります。当院では、手術前のインフォームド・コンセントの際に、術後せん妄が起こる可能性について必ず説明しています。

Q. 手術後の痛みはどのくらいでなくなりますか?
A.

一般的には、手術後3日目に痛みが軽減し、1週間程度でほとんど痛みがなくなります。特にお子さんや若い方は急速に痛みがなくなる傾向にあります(個人差があります)。
痛みがある間は、痛み止めの経口薬や点滴等でコントロール・ 管理を行います。

Q. 手術直後にできなくなることはありますか?
A.

若い方の場合、股関節や他の関節が柔らかく、コルセットで固定した背骨の代わりとして機能するため、手術直後もそこまで支障はありません。
高齢の方は加齢とともに体が硬くなるほか、拘縮(関節が硬くなり動きが制限される状態)が生じる可能性もあるため、「靴下が履きにくい」「足の爪が切りにくい」などの動作で多少不便を感じる方もいらっしゃいます。
手術後に骨癒合が完了したら、日常生活への復帰が可能となります。スポーツなど含め、日常生活動作に制限はありません。

Q. 手術後はどのくらいで自然に動けるようになりますか?
A.

基本的な日常生活動作は、どなたも術後半年くらいで問題なくおこなえるようになります。これは、骨癒合(矯正した骨がその形でくっつくこと)にかかる期間が約半年とされているからです。
また、自由に動けるようになるまでの期間は、若い方であれば約半年、高齢の方は骨の回復が遅いため、9か月から1年ほどが目安となります(個人差があります)。

Q. 手術の傷跡は残りますか?
A.

もともと傷跡が残りやすい体質の方もいらっしゃるため個人差がありますが、ほとんどの場合は5〜10年程度で目立たなくなります。傷跡が気になるという方には、傷口に貼るドレニゾンテープ、塗り薬、飲み薬のリザベンを処方しています。また、さらに傷跡を目立たなくしたいという方には、形成外科の受診を勧めています。

Q. 背中に傷跡を残さない手術方法はありますか?
A.

センター長の江原が考案・開発した「小切開前方矯正固定術」があります。こちらの手術では、脇の下のライン上の前後2箇所を小さく切開するため、背中に手術の痕が残りません。また、傷跡も脇の下に隠れて目立たなくなるのが特徴です。ただし、長いカーブや硬いカープ、重度のカープの場合は適応できないほか、主に10代~20代の方の適応となります。

Q. 手術で体内に入れるスクリューやロッドはどのようなものですか?
A.

脊椎の手術に使用されるスクリューやロッドはチタン合金でできています。チタン合金は耐食性に優れており劣化もしないため、長期間体内に入っていても影響はありません。MRI撮影も可能です。
また、スクリューの重さは1本5〜6gと軽く、28本すべてを設置してロッドの重さを足しても200~300gのため、大きく体重が変わることもありません。
手術で挿入したスクリューやロッドは基本的に取り出すことはしません。