よくわかる!側彎症

どのような病気?

背骨(脊柱)は、首の部分を構成する頚椎、胸の部分を構成する胸椎、腰の部分を構成する腰椎、そして仙椎・尾椎から成り立っています。背骨は頭から骨盤までを支える重要な骨で、正面から見るとまっすぐ、横から見るとS字型に緩やかに彎曲しています。(イメージ1)。
このS字型は、頚椎が前に、胸椎が後ろに、そして腰椎が再び前に向かって彎曲することで、体全体のバランスを保ち、効率的に体重を支える役割を果たしています。(イメージ2)

イメージ1 脊柱の構造説明
イメージ2 横から見た脊柱

この形が崩れることを「脊柱変形」と呼び、特に左右(側方)に曲がってしまう状態を「脊柱側彎症」といいます。脊柱が側方に彎曲すると同時に、カーブの凸側へ向かって脊柱がねじれる状態となり、3次元の変形になります。
多くの場合、成長期の子どもや思春期の若い方に発症することが多いですが、大人になってから発症することもあります。

脊柱側彎症の評価方法

脊柱側彎症の重症度を評価する際に重要な指標が「Cobb角(コブ角)」です。Cobb角とは、曲がっている背骨の上下で最も傾いている椎骨(背骨の骨)に沿って線を引き、その線どうしが交わる角度のことを指します。
簡単に言うと、背骨がどれだけ曲がっているかを角度で測り、その角度が大きいほど、側彎症が進行していることを示します。このCobb角が10度以上であれば、側彎症と診断されます。

  • 軽度:Cobb角が10度〜20度
  • 中等度:Cobb角が20度〜40度
  • 重度:Cobb角が40度以上

軽度や中等度の場合は、経過観察や装具治療が主流になりますが、重度になると手術の適用となります。

脊柱側彎症の症状・特徴

  • 背骨が左右に曲がって見える
  • 肩の高さが左右で違う
  • 腰の位置が左右でずれる
  • 背中や腰に痛みが出ることもある
  • 呼吸器障害(肺活量の減少)

など

生活への影響

軽度の脊柱側彎症は、日常生活にほとんど影響がないことも多いですが、進行すると腰や背中の痛み、姿勢の崩れ、肩の高さの違い、さらには呼吸の困難などが起こることがあります。
外見的な変化や体力低下が生じ、心理的なストレスも増すことがあります。

側彎症の種類

側彎症には、「特発性脊柱側彎症」と「症候性脊柱側彎症」、「成人脊柱側彎症」、「成人脊柱後彎症」があります。

脊椎の疾患についてはこちら

側彎症に似た病気や側彎症の原因となる病気

1. 脊柱後彎症

脊柱後彎症は、脊柱が過度に後方に湾曲する状態です。正常な胸椎部分の後彎が強調され、「猫背」のような姿勢になることがあります。脊柱後彎症と側彎症の違いは、側彎症が脊柱の左右への湾曲であるのに対し、後彎症は前後の湾曲の問題です。後彎症が重度の場合、姿勢の異常や背中の痛み、呼吸機能の低下が見られることがあります。

2. 腰椎前彎症

腰椎前彎症は、腰椎が過度に前方へ湾曲する状態です。通常、腰椎は前方に湾曲していますが、これが過度になると腰痛や姿勢の異常が引き起こされます。側彎症と異なり、腰椎前彎症は腰の部分での前後の湾曲が問題となりますが、側彎症と同様に背中や腰に負担がかかるため、症状が似ることがあります。

3. 脊椎側彎性変形

脊椎側彎性変形は、側彎症と同様に脊柱が左右に曲がる状態ですが、その原因が特定できる場合に使われる用語です。例えば、外傷や感染、腫瘍、神経筋疾患などの明確な原因がある場合に「側彎性変形」と呼ばれます。これに対して、特発性側彎症は原因が不明なまま発症することが多いです。

4. 脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症は、脊柱内の神経を通る空間(脊柱管)が狭くなり、神経を圧迫する状態です。この結果、腰痛や足のしびれ、歩行障害が引き起こされることがあります。側彎症と同様に、姿勢が悪化し、腰や背中に負担がかかるため、症状が似ていることがあります。脊柱の変形が進行することで、側彎のような姿勢の異常が見られることもあります。

5. 筋ジストロフィー

筋ジストロフィーは、筋肉の弱化や萎縮を引き起こす遺伝性疾患です。筋肉が弱くなることで、脊柱を支える力が低下し、側彎症のような脊柱の変形が起こることがあります。特に、若い年齢で発症する筋ジストロフィーでは、脊柱の側彎が進行することが多く、姿勢の異常が顕著になります。

6. 強直性脊椎炎

強直性脊椎炎は、主に脊柱や骨盤の関節に炎症を引き起こし、脊柱が硬くなり、湾曲する病気です。この病気では、脊柱が徐々に硬直していき、前屈みの姿勢や後彎が進行することがあります。側彎症のように脊柱のカーブが変化することがありますが、側彎症と異なり、関節の硬直や痛みが主な特徴です。

7. 神経筋性側彎症

神経筋性側彎症は、脊髄損傷、脳性麻痺、筋ジストロフィーなどの神経筋疾患が原因で引き起こされる側彎症です。筋力の低下や神経の異常により、脊柱を正しく支えることができなくなり、側彎が進行します。特発性側彎症と同様に脊柱が左右に湾曲するため、見た目の症状は似ていますが、原因が異なります。