よくわかる!側彎症
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側彎症の中でも、最も一般的な特発性側彎症は、特に、思春期の成長期に発症することが多く、脊柱側彎症全体の80%以上を占めています。特発性側彎症の正確な原因はまだはっきりと分かっていませんが、いくつかの要因が関与している可能性が示唆されています。
特発性側彎症の原因
1. 遺伝的要因
特発性側彎症は、家族内で複数の患者が見られることがあり、遺伝的な要因が関係していると考えられています。具体的な遺伝子はまだ特定されていませんが、特定の遺伝子や遺伝的な要素が側彎症の発症リスクを高める可能性があります。
2. 成長とホルモンの影響
特発性側彎症は、思春期の成長期に発症することが多いため、成長スパートと関連があるとされています。成長スパートとは、身長が急激に伸びる時期を指し、思春期の第二次性徴期に訪れます。成長ホルモンや性ホルモンの変化が骨や筋肉の成長に影響を与え、側彎症が進行することが考えられます。
3. 筋肉と結合組織の異常
筋肉や結合組織の強度や柔軟性が正常とは異なる場合、脊柱の安定性に影響を与えることがあります。筋肉のバランスが崩れることで、背骨が曲がりやすくなることが考えられます。特に、脊柱を支える筋肉の不均衡が影響している可能性があります。
4. 神経系の異常
特発性側彎症の一部では、神経系の異常が関与していると考えられることがあります。脳や脊髄からの神経信号が筋肉に正常に伝わらない場合、筋肉の動きやバランスが崩れ、側彎症が進行することがあります。
5. 骨の成長の不均衡
脊柱を構成する骨(椎骨)の成長が均一でない場合、片側の成長が他方よりも速く進むことで脊柱が曲がることがあります。これは骨の成長速度や方向が正常とは異なる場合に発生することがあります。
6. 環境要因
食生活や生活習慣、運動不足などの環境的要因が、特発性側彎症の発症リスクを増加させる可能性があると考えられていますが、これらの要因がどの程度影響を与えるかはまだ不明です。
まとめ
特発性側彎症は、複数の要因が複雑に絡み合って発症する可能性が高く、単一の原因で説明するのは困難です。研究は進んでいますが、現時点では特発性側彎症の発症に明確な原因があるわけではなく、遺伝、成長、筋肉のバランス、神経系の影響など、いくつかの要因が関係していると考えられています。
症候性脊柱側彎症の原因
症候性脊柱側彎症は、明確な原因が存在する脊柱側彎症の一種で、他の疾患や外傷、病態が脊柱の変形を引き起こします。
1. 神経筋疾患
神経筋疾患に関連する側彎症は、筋肉や神経系の異常が原因で発生します。このタイプの側彎症は、筋力の低下や筋肉の不均衡が脊柱に異常な負荷をかけることで起こります。具体的な疾患には、以下のようなものがあります。
- 筋ジストロフィー:筋肉の萎縮や弱化を引き起こし、脊柱の変形を伴うことが多いです。
- 脳性麻痺:筋肉のコントロールが難しくなり、脊柱が曲がるリスクが高まります。
- 脊髄筋萎縮症:脊髄の神経細胞が影響を受け、筋力の低下を引き起こします。
2. 先天性脊柱異常
先天性側彎症は、脊柱の骨の発育異常によって生まれつき発生するものです。胎児期に脊柱の骨(椎骨)が正しく形成されず、成長とともに側彎が進行することがあります。原因には以下のようなものが含まれます。
- 椎骨の奇形:椎骨が半分しか形成されていなかったり、複数の椎骨が融合していることがあります。
- 椎骨の成長異常:一部の椎骨が異常に成長し、脊柱の曲がりが発生します。
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3. 外傷や手術
外傷や外科手術が原因で、脊柱の正常な配列が崩れることがあります。例えば、骨折や外科的処置により、椎骨の配置が変わったり、筋肉のサポートが失われることがあります。このような場合、外傷や手術の結果として側彎症が発生することがあります。
4. 骨疾患
骨疾患は、骨の強度や構造に影響を与え、脊柱の変形を引き起こすことがあります。具体的な疾患には以下のものがあります。
- 骨粗鬆症:骨の密度が低下し、骨折のリスクが高まることで、脊柱が崩れて側彎症を引き起こすことがあります。
- 骨形成不全症(骨が脆く、簡単に骨折する疾患):骨の異常が原因で、脊柱の変形が進行することがあります。
5. 腫瘍
脊柱やその周辺に腫瘍が発生すると、脊柱の正常な形状が崩れることがあります。腫瘍が脊柱に直接影響を与えたり、脊髄の神経や筋肉に影響を及ぼすことで側彎症を引き起こすことがあります。
6. 炎症性疾患
一部の炎症性疾患は、脊柱やその周辺の組織に影響を与え、側彎症の原因となることがあります。具体的には
- 脊椎炎:脊柱の関節や周囲の組織に炎症が起こり、変形を引き起こすことがあります。
- 関節リウマチ:脊柱の関節に炎症を引き起こし、形状の変化を誘発することがあります。
7. 代謝異常
代謝異常が骨の健康や筋肉の機能に影響を与え、側彎症の発生リスクを高めることがあります。例えば、ビタミンDの欠乏やホルモンの異常が骨の成長や強度に影響を与えることがあります。
まとめ
症候性側彎症は、基礎となる疾患や病態が原因で発生するもので、特発性側彎症とは異なり、根本的な原因が明確に特定できることが多いです。そのため、治療では原因となる疾患の管理とともに脊柱の矯正手術も検討されます。
成人脊柱側彎症の原因
成人脊柱側彎症は、40~80代に発症する脊柱の変形で、近年急速に増加しています。思春期特発性側彎症など若いころからの脊柱変形が放置され、加齢とともに進行増悪したものです。背部痛や腰痛、体幹バランスが左右へ傾斜、さらに前掲することで歩行がしにくくなります。肺活量の低下といった心肺機能に対する悪影響や、逆流性食道炎を生じます。この側彎症の原因は、大きく以下のような要因が挙げられます。
1. 変性による側彎症(変性側彎症)
加齢に伴う脊柱の変性が原因で、椎間板や椎骨、靭帯などが変性し、脊柱が徐々に曲がることがあります。以下のような要素が影響します。
- 椎間板の変性:椎間板が老化や摩耗により薄くなることで、脊柱のバランスが崩れます。
- 椎骨の変性:骨が弱くなり、椎骨が圧縮されたり変形したりすることで、側彎が進行します。
- 関節の変性:脊柱の小関節(椎間関節)が劣化し、脊柱の安定性が低下することで側彎が発生します。
2. 未治療の特発性側彎症
若年期や思春期に発症した特発性側彎症(原因不明の側彎症)が治療されず、そのまま成人期に持ち越されることがあります。若い頃から存在していた側彎が加齢によってさらに悪化する場合があります。
3. 外傷や手術の影響
過去に受けた外傷や脊柱の手術が原因で、脊柱のバランスが崩れ、成人期に側彎が進行することがあります。例えば、脊柱の骨折や手術による椎間板の変性が、脊柱全体のバランスに影響を与え、側彎を引き起こすことがあります。
4. 骨粗鬆症
骨粗鬆症は、骨の密度が低下し、骨がもろくなる疾患です。骨粗鬆症が進行すると、椎骨が圧迫骨折を起こしやすくなり、その結果として脊柱が変形し、側彎症になることがあります。特に高齢者に多く見られる原因です。
5. 神経筋疾患
神経や筋肉の異常が原因で、成人期に側彎症が進行することがあります。筋肉の弱化や神経の機能不全が、脊柱の正常な位置を維持できなくし、側彎を引き起こします。具体的な疾患には、パーキンソン病や筋ジストロフィーなどが含まれます。
6. 代謝や内分泌の異常
一部の代謝異常や内分泌異常が、骨や筋肉の健康に影響を与え、側彎症のリスクを高めることがあります。例えば、ビタミンDの欠乏や甲状腺機能の異常が骨密度や筋力に影響を与えることがあります。
7. 悪性腫瘍や炎症性疾患
腫瘍や炎症性疾患が脊柱に影響を与え、成人脊柱側彎症を引き起こすことがあります。腫瘍が脊柱の骨や周囲の組織に影響を与えることで、脊柱の形状が変わることがあります。また、炎症性疾患による慢性的な関節炎が、脊柱の配列を乱すことがあります。
まとめ
成人脊柱側彎症は、加齢による変性や過去の側彎症が再び進行したもの、外傷、骨粗鬆症、神経筋疾患など、さまざまな原因で発症します。
成人脊柱後彎症の原因
加齢に伴う脊柱の変性が、成人脊柱後彎症の最も一般的な原因です。脊柱の椎間板や椎骨が老化や摩耗により変性し、後彎が進行することがあります。具体的には以下のような要因が影響します。
1. 変性による後彎症(変性後彎症)
加齢に伴う脊柱の変性が原因で、椎間板や椎骨、靭帯などが変性し、脊柱が徐々に曲がることがあります。以下のような要素が影響します。
- 椎間板の劣化:椎間板が薄くなり、弾力性を失うと、脊柱の自然なバランスが崩れ、後彎が強調されることがあります。
- 椎骨の圧縮:骨密度の低下や椎骨の劣化により、圧縮骨折が起こると、脊柱全体のカーブが後方へ傾きやすくなります。
- 椎間関節の変性:椎間関節の劣化が進行すると、脊柱の後方へのバランスが変化し、後彎が強まることがあります。
2. 骨粗鬆症
骨粗鬆症は、骨密度が低下して骨がもろくなる疾患で、特に高齢者に多く見られます。骨粗鬆症が進行すると、椎骨が圧迫骨折を起こしやすくなり、その結果として脊柱が後方に傾き、後彎が進行することがあります。この圧迫骨折による後彎は、高齢者の後彎症の主な原因の一つです。
3. 姿勢の悪化や筋力の低下
長年の悪い姿勢や、加齢による背中や腹部の筋力低下が、脊柱の後彎を悪化させることがあります。特にデスクワークやスマートフォンの使用時間が長いと、前屈みの姿勢が習慣化し、後彎が進行する原因になります。また、背筋や体幹の筋肉が弱くなると、脊柱を支える力が不足し、後彎が進行しやすくなります。
4. 過去の脊柱手術や外傷
過去に脊柱の手術を受けたことがある場合や、脊柱に外傷を受けた場合、その影響で後彎が進行することがあります。特に、椎間板や椎骨に影響を与える手術や外傷があると、脊柱のバランスが崩れ、後方への湾曲が強くなることがあります。
5. 神経筋疾患
パーキンソン病や筋ジストロフィーなどの神経筋疾患が、筋肉のコントロールに影響を与え、脊柱の後彎を引き起こすことがあります。これらの疾患では、筋力の低下や筋肉の制御が難しくなるため、姿勢の維持が困難になり、脊柱が後方に傾きやすくなります。
6. 先天的な脊柱の異常
一部の人々は先天的に脊柱の形状が異常で、これが成人期に進行することがあります。例えば、先天性の脊柱の異常があった場合、それが成人期に後彎症として現れることがあります。
7. 関節リウマチや強直性脊椎炎
関節リウマチや強直性脊椎炎といった炎症性疾患が脊柱に影響を与え、脊柱の後彎を引き起こすことがあります。これらの疾患では、脊柱の関節や周囲の組織が炎症を起こし、後彎が進行することがあります。
まとめ
成人脊柱後彎症は、加齢による変性、骨粗鬆症、姿勢の悪化、過去の外傷や手術、神経筋疾患、先天的な要因、炎症性疾患など、さまざまな要因で発症します。早期の診断と治療が、日常生活への影響を最小限に抑えるために重要です。特に進行すると、背中の痛みや姿勢の異常、呼吸や消化器系への影響が出ることがあるため、手術による脊柱の矯正が必要な場合もあります。
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