よくわかる!側彎症

背骨が左右に曲がる側彎症は、特に思春期の子供に多く見られますが、中高年になって急に発症することもあり、成人側彎症と呼ばれます。子供と大人、それぞれの側彎症の症状と治療法について解説します。

子供の側彎症

子供の側彎症は、学校検診で見つかることが多く、「運動器学校検診」が2016年度から実施されています。この検診では、家庭での評価の後、学校医が背骨の曲がりを視触診で確認します。成長期の子供は大人になるまで側彎症を発症する可能性があるため、家庭でのチェックや、気になることがあれば整形外科などの専門外来を受診することが大切です。
思春期の女子は特に側彎症のリスクが高く、13歳から14歳の女子の発症率は2.5%で、男子の約7倍とされています。小学校高学年から中学生にかけて注意が必要です。

側彎症と診断された場合、軽い症状であれば、大人になるまで経過観察だけで十分な場合もありますが、進行が早く重度の場合は手術治療が必要となるケースもあります。

注意するポイント

  • 思春期の女子は特に注意が必要
  • 軽度の側彎症は経過観察が基本
  • 症状が進行した場合、装具療法や手術治療が検討されます

子供の側彎症の治療

経過観察

成長が終了するまで、定期的にX線検査を行い、側彎の進行をモニタリングします。特に成長が早い時期には頻繁なチェックが必要です。

コルセット治療

成長期の子供は、背骨がまだ成長しているため、進行を抑えるためにコルセットを使用することが一般的です。Cobb角が25度以上の場合に考慮されます。

手術

重度の側彎症(Cobb角40度以上)や、進行が著しい場合に手術を検討します。手術は、彎曲した背骨の矯正と固定を目的として行います。

大人の側彎症

成長期に多い側彎症ですが、大人(40~80代)になってから発症することもあり、これを「成人側彎症」と呼びます。成人側彎症は、思春期特発性側彎症など若いころからの脊柱変形が放置され、加齢とともに進行増悪したものです。

成人側彎症の主な症状

  • 腰痛:背骨や腰骨への負担が原因
  • 長時間立つ・歩くことが困難になる
  • 下半身の神経痛:脊柱に圧迫がかかることで生じる
  • 逆流性食道炎、便秘、嚥下障害:内臓に影響が及ぶことがある
  • 呼吸困難:姿勢が悪化し肺や胸郭に影響が出るため

特に「腰痛」や「下半身の神経痛」は、背骨の曲がりが神経に影響を与えるため発症します。また、脊柱管狭窄症や腰部椎間板ヘルニアなどの合併症のリスクも高まります。
成人側彎症が重度の場合、手術治療では後方矯正固定術を行います。入院日数は通常10日前後ですが、症状や骨質、患者さんの体力によって多少変わることもあります。

大人の側彎症で注意すべきポイント

  • 加齢と共に日常生活に影響する症状が出やすい
  • 脊柱管狭窄症や腰部椎間板ヘルニアなどの合併症に注意

大人の側彎症の治療

運動療法

筋力強化を目指す運動療法があります。姿勢改善や痛みの軽減に効果が出る場合もあります(個人差があります)。

痛み止めや薬物治療

大人の側彎症は痛みを伴うことも多く、痛みのコントロール管理のため鎮痛剤や抗炎症薬が使われることがあります。

手術

痛みや神経圧迫が著しく日常生活に影響がある場合に手術が検討されます。手術は変形が進んでいる背骨の矯正を行い、痛みの軽減・快適な日常生活を送っていただくことを目的としています。

治療方法の違いについて

成長の影響

子供の脊柱側彎症は、成長期における背骨の発育が重要な要素となります。子供の場合、骨がまだ成長しているため、背骨の曲がりが急速に進行するリスクがあります。したがって、コルセットや体操で矯正を試みることで、背骨のさらなる曲がりを防ぐことができる場合もあります。コルセットは、成長期が終わるまでの間に背骨がまっすぐに保たれるようにサポートする治療法ですが、個人差があり、急速にカーブが進行し悪化している場合は手術の適応となります。

一方、大人の脊柱側彎症は、成長が既に完了しているため、背骨のカーブの進行は緩やかなことも多いですが、痛みや姿勢の問題が現れやすくなります。薬物治療で痛みが軽減されない場合、姿勢や症状で日常生活にお困りの場合は手術の適応です。

痛みと日常生活の影響

子供の側彎症は、進行が速い場合でも痛みが少ないことも多く、見た目の変化や背骨の曲がりが治療の主な焦点となります。しかし、大人の側彎症では、背中の痛みや呼吸苦など症状が主な問題となり、生活の質に大きな影響を与えることがあります。どちらも進行が速い場合や重度の場合は手術を検討します。

手術のリスクと目的

子供も大人も側彎症の手術は、曲がった脊柱を矯正し固定することを目的としています。子供の背骨は強く柔軟性があるため、手術による背骨の矯正固定がしっかりできる傾向にあります。

一方で、高齢の方は、骨がもろいことが多いので、まずは薬で骨強化を行ったうえで手術になります。骨密度がしっかりしていて、全身状態に問題がなければご高齢の方でも問題なく手術を受けられます。当院の脊柱側彎症手術を受けた患者さんの最高齢は88歳です。